国内の建築を語るうえで、建築家・安藤忠雄氏を外せません。彼の建築は建築業界に大きな影響を与えています。
そこで今回は、安藤忠雄氏が手がけた建築物についてご紹介します。
日本のみならず世界でも高い評価を集める建築12選から、安藤忠雄氏の特徴や建築デザインのアイデアを見つけましょう。
建築家・安藤忠雄
世界には数多くの有名な建築家がいますが、日本のみならず世界でも知名度の高い建築家として知られている人物が安藤忠雄氏です。
安藤忠雄氏の独学で建築を学んだバイタリティと生まれ持った才能から生み出される建築に世界中の人が魅了されています。
例えば独特の造形のコンクリート打ち放しの建築が世界的に注目を集め、1995年には「プリツカー賞」という建築界のノーベル賞とも言われる世界最高峰の賞も受賞しています。
>>安藤忠雄建築研究所
安藤忠雄氏による建築の特徴
建築には、建築家それぞれの特徴が現れます。
安藤忠雄氏は、現在ほど一般的ではなかったコンクリート打ち放しの建築手法を積極的に取り入れることで、無機質なコンクリートに表れる美しさを表現しています。
また、建築ごとにさまざまな光の空間がデザインされています。
例えば、光の教会では風・水・光・地中が一連のデザインとしてそれぞれ異なる光のデザインに仕上がっています。
安藤忠雄氏による建築12選(国内)
安藤忠雄氏は、これまで日本国内外で多くの建築をしてきました。
そのデザインは多種多様で、建築について学びたい方も多くのヒントを得られるでしょう。
そこでここからは、日本国内の安藤忠雄氏による建築を12個に厳選してご紹介します。
デビュー作「住吉の長屋」
まずご紹介する建築は、大阪市住吉区にある「住吉の長屋」です。(1976年・大阪)
安藤忠雄氏のデビュー作である「住吉の長屋」は1976年に建築されました。
昔ながらの木造建築だった三軒長屋の真ん中の1軒を切り取って、鉄筋コンクリート作りの小住宅に建て替えています。
昔ながらの街並みに目を引く新しさを出しつつ、街並みに馴染むデザインです。
当時は、室内の一部は中庭を通って部屋に行かなければならない設計だったことから、建設非難されることもありました。
しかしその後、大胆かつ斬新なデザインが多くの定評を集め、日本建築学会賞の受賞やDOCOMOMO JAPANへの選定、日本のモダン・ムーブメントの建築に選ばれています。
開館時間:24時間営業
六甲山の急斜面に張り付く住宅群「六甲の集合住宅」
次にご紹介する建築は、兵庫県にある「六甲の集合住宅」です。(1983年・兵庫)
安藤忠雄氏の集合住宅作品で、住戸の一部が六甲山の急斜面に張り付いているような建築です。
規則的に並んだ格子状の各住戸が小広場や階段などの共用空間を通じて結び付けられており、中庭やテラスからは自然や眺望を楽しめる構造になっています。
また、セットバックしながら段上がユニットに重なっていることも特徴的です。
開館時間:住宅のため室内は見学不可
無機質な空間に吹き抜ける風を感じる「風の教会」
次にご紹介する建築は、1986年に建築された兵庫県にある「風の教会」です。(1986年・兵庫)
安藤忠雄氏の人気作品の一つで、建築家を始め多くの人が訪れています。
特に、小さな礼拝堂につながる道はコンクリート打ち放しになっており、安藤忠雄氏らしさが出た空間が広がっています。
他にも、アートとして長椅子を横に倒したり、教会内部の床は玄晶石のみを使用するなど、数多くのこだわりを感じられます。
十字架と大自然が生む幻想的な光景「水の教会」
次にご紹介する建築は、北海道にある1988年に建設された「水の教会」です。(1988年・北海道)
水の教会も教会三部作の一つで、二部作目として風の教会の2年後に建築されました。
水の教会は、水という自然と人との向き合い方を考えて設計された建物です。
教会を取り囲むように設置されたL字型の壁に設置された扉を開けると、目の前に佇む大きな十字架、十字架と向き合う礼拝堂など、安藤忠雄氏が考え抜いたこだわりの空間が広がっています。
神秘的な光の十字架が美しい「光の教会」
次にご紹介する建築は、教会三部作最後の作品である「光の教会」です。(1989年・大阪)
大阪府にある光の教会は、水の教会が建築された翌年(1989年)に建築されました。
他の教会三部作が結婚式やホテルとしても使われているのに対し、礼拝堂・牧師館・日曜学校ホールの3棟で構成されているキリスト教プロテスタント系の境界施設である光の教会は、キリシタンの礼拝や葬式といった宗教施設としてのみ利用されています。
光の教会も独特の世界観が広がっていますが、特に礼拝堂は比率1:3の長方形の部屋が壁に貫く形で配置されており、十字架から差し込む光をより神秘的な光に仕上げています。
一方で床は黒く塗装されており、光と影の対比がくっきりと描かれている点も印象的です。
建築の内側からは瀬戸内海への視界が開ける「ベネッセハウス」
次にご紹介する建築は、1992年に香川県に建築された「ベネッセハウス」です。(1992年・岡山)
ベネッセハウスは、「自然・建築・アートの共生」というコンセプトのもと美術館とホテルが一体化されています。
瀬戸内海を一望できる高台に建築されていることから壮大な景色を楽しめることはもちろん、大きな開口部や各階を繋ぐ大胆なスロープによって、自然を内部に導き入れるような設計になっている点が特徴です。
緑の大地の再生を担った「淡路夢舞台」
次にご紹介する建築は、1999年に建築された「淡路夢舞台」です。(1999年・兵庫)
兵庫県の緑豊かな土地に建築されており、一度人間の手によって山が削られて自然の姿を失っていた場所を再建しました。
晴れた日は太陽の光が降り注ぎ、緑豊かな土地と青空がコントラストを描き、キラキラと輝く世界が広がります。
震災復興の象徴となった「兵庫県立美術館」
次にご紹介する建築は、兵庫県にある「兵庫県立美術館」です。(2001年・兵庫)
2001年に阪神淡路大震災の復興の象徴として建築されました。美術品と芸術品の融合をテーマに安藤忠雄氏のこだわりが詰め込まれた建物です。
エントランスホールは落ち着いた雰囲気ですが、展示室には大きなガラス窓によって自然光が降り注ぐ明るい空間となっており、建物内で影と光が際立っています。
自然光は季節によって異なるため、シーズンごとに違った顔を見せる点も特徴的です。
地下に降り注ぐ自然光が幻想的な「地中美術館」
次にご紹介する建築は、2004年に香川県に建築された「地中美術館」です。(2004年・岡山)
「自然と人間を考える場所」をコンセプトに、建物の大半を地下に埋設することで、瀬戸内の綺麗な景観が失われない様に設計されています。
地下でも自然光が降り注いでいるため、四季折々の顔を見せる明るい館内に仕上げられている点に、安藤忠雄氏のこだわりが見られます。
開館時間
・3月1日 ~ 9月30日:10:00 ~ 18:00(最終入館17:00)
・10月1日 ~ 2月末日:10:00 ~ 17:00(最終入館16:00)
定休日:月曜日
https://benesse-artsite.jp/art/chichu.html
表参道の傾斜を活かした700mのスパイラルスロープ「表参道ヒルズ」
次にご紹介する建築は、2006年に東京都に建築された「表参道ヒルズ」です。(2006年・東京)
今や表参道を代表する建物となった表参道ヒルズは、独創的なデザインでありながら表参道の歴史ある景観に馴染んでいます。
コンクリートを基調とした建物ですが、屋上緑化を取り入れ、街並みにあるケヤキ並木とうまく融合をされた景観です。
さらに、表参道の傾斜を活かした700mにも及ぶスパイラルスロープも特徴的です。
開館時間
ショップ
・月~土曜日:11:00~21:00
・日曜日:11:00~20:00
レストラン
・月~土曜日:11:00~23:00
・日曜日:11:00〜22:00
https://www.omotesandohills.com/
一枚の布からイメージを得た「21_21 DESIGN SIGHT」
次にご紹介する建築は、2007年に東京都に建築された「21_21 DESIGN SIGHT」です。(2007年・東京)
東京ミッドタウンのミッドタウン・ガーデン内にあるギャラリーで、外観は周辺環境のためにシンプルに、内観は解放感のある空間が広がっています。
地上1階地下1階の低層建築であり、三角屋根が一際目を引くデザインです。
三宅一生の服づくりのコンセプトである「一枚の布」に着目し、一枚の鉄板から成る屋根のデザインを採用したとされています。
開館時間:
・平日 11:00 – 17:00(入場は16:30まで)
・土日祝 11:00 – 18:00(入場は17:30まで)
https://www.2121designsight.jp/
安藤忠雄氏が建築費を負担した子供のための図書館「こども本の森・中之島」
最後にご紹介する建築は、2020年に大阪府に建築された「こども本の森・中之島」です。(2020・大阪)
約18,000冊を超える多彩な書籍が収蔵されており、子供が本と出会い学ぶ空間が広がっています。
弧を描いて堂島川に沿うように建築されており、水の都としても知られる大阪府の景観をより際立たせています。
安藤忠雄氏による建築3選(海外)
安藤忠雄氏は日本のみならず、海外でも多数の建築を設計しています。
ここからは、海外で建築された安藤忠雄氏の建築物を3点ご紹介します。
コンクリートとガラスと水の調和「フォートワース現代美術館」
まずご紹介する建築は、2002年にアメリカに建築された「フォーワース現代美術館」です。(2002年・アメリカ)
外との繋がりと水平性を重視して建築されており、館内はガラス窓によって館内展示を見ながら水盤も眺められます。
大きなガラス窓により、外観も館内も解放感に溢れています。
開館時間:
・火-木:10:00-17:00
・金:10:00-20:00
・土-日:10:00-17:00
https://www.themodern.org/
2万坪を超える敷地全体に広がるミュージアム「Museum San」
次にご紹介する建築は、2012年に韓国に建築された「Museum San」です。(2012年・韓国)
人気K-popアイドルの来館により、近年若者に人気の高い施設として韓国でも知られています。
標高275mに位置し、自然に囲まれた静寂さが特徴的で、関内も広い窓によって自然光が降り注ぐ空間です。
安藤忠雄氏は「敷地全体をミュージアムにしたかった」と語っており、施設周辺も緑や古代遺跡などによって自然を満喫できます。
開館時間:10:30-18:00
http://www.museumsan.org/eng/
くりぬかれた円筒が特徴的な「保利大劇院」
最後にご紹介する建築は、2016年に中国に建築された「保利大劇院」です。(2016年・中国)
上海で進行中の3大安藤作品の一つとしても知られています。
打ち放しのコンクリートをガラスで包み、二重皮膜のキュービックによってシンプルでありながら独特の世界観を演出しています。
さらに、窓の役割を持つ複数のくりぬかれた円筒があり、安藤忠雄氏ならではの建築美が楽しめます。
日本を代表する建築家・安藤忠雄氏の建築に触れよう
今も建築を続ける安藤忠雄氏。
現在は、「うめきた2期地区開発プロジェクト」において安藤氏が設計監修を手がけるネクストイノベーションミュージアムが進行中です。
都市公園が安藤忠雄氏の手によってどのように生まれ変わるのか、世界中の人が注目しています。
世界で最も有名な日本人建築家と言っても過言ではない安藤忠雄氏。
建築や建設に興味がある方は、安藤忠雄氏の建築物から建築に触れてみましょう。